•3人用

•男性役2、女性役1

•20分くらい

•シリアス※叫びあり



登場人物

・カルマ(男性)

・パキラ(女性)

・アンスリウム(男性)

________________________


カルマナレ「俺は、デラシネを狩ることで生計を立てている。この半球状の綺麗な見た目の生きものを食べると、人間は、言葉にしなくても想いを伝え合うことができる。今、王都ではこいつが大流行りだ。おかげで食いっぱぐれなくて済む」


アンスリウム「いつもありがとうございます。デラシネはとても臆病な生物ですからね。これだけの量を仕留められるのは、カルマさんくらいですよ」


カルマ「ああ。…いや、こいつらは臆病なんじゃない。人に近寄らないだけだ」


アンスリウム「それが臆病ということでは?まぁ、それは置いておいて。はい。こちらが今回の報酬です」


カルマ「ああ。また来る」


アンスリウム「是非とも。もっと頻度を増やしてくれてもいいんですよ?」


カルマ「…そうだな」


アンスリウム「今後ともご贔屓に」



場面転換、カルマの自宅


カルマ「帰ったぞ」


パキラ「お帰りなさい。遅かったわね。またいつもの場所で?」


カルマ「あぁ。すまん。考え事をしていて遅くなった」


パキラ「そう。…ねぇ、デラシネ狩りなんてやめたら?優しいあなたには合ってないわ。もっと…ゴホッ、ゴホッ」


カルマ「大丈夫か?」


パキラ「えぇ、平気」


カルマ「寝ていてくれ、パキラ。夕飯なんて作らなくても、俺は自分で勝手に食べる」


パキラ「そうはいかないわ。あなたが私のために働いてくれているんですもの。何か返させてちょうだい」


カルマ「いらん気を使うな。もし倒れられでもしたら、どうしたらいいか分からん」


パキラ「そう。…じゃあ、お言葉に甘えて休ませてもらうわ。お夕飯は作ってあるから」


カルマ「あぁ」


カルマナレ「パキラは俺の兄の結婚相手だ。だが、兄が事故で死んで、未亡人になった。以来、この歪な共同生活が続いている。俺は別に、自分がどんな生活を送ろうと構わないが、パキラにはもっといい暮らしをさせてやりたいと思う。どうすべきか」



ノックの音


カルマ「誰だ、こんな夜更けに」


アンスリウム「どうも」


カルマ「……何の用だ」


アンスリウム「お分かりでしょう。例の件のお返事を聞きに来たんです」


カルマ「その事ならもう返事は伝えたはずだ。考えさせてもらうとな」


アンスリウム「ええ、ですが考えをまとめるのに些か時間が掛かりすぎているのではと思いまして。催促に来ました」


カルマ「何度来られようが、全てはパキラ次第だ」


アンスリウム「パキラさんは?」


カルマ「今は休んでる。直接話をしたいならまた日を改めてくれ」


アンスリウム「そうですか…。では、パキラさんにこれを。色良いお返事をお待ちしていますとお伝え下さい」


カルマ「分かった。もう帰ってくれ」


アンスリウム「では」


カルマ「ったく」


パキラ「どなた?」


カルマ「…別に」


パキラ「アンスリウムさんね。…それは?」


カルマ「何でもない」


パキラ「ごめんなさいね。いつもあなたに嫌な役回りを押し付けてしまって」


カルマ「あぁ…、嫌なやつに目をつけられたもんだ」


パキラ「そんな風に言わないで。あの人も、苦しい生活を味わってああいう風になってしまったのよ」


カルマ「生活が苦しいのはみんな一緒だ」


パキラ「そうね。…ねぇ、もし」


カルマ「もしも何もない。この話は終わりだ。俺ももう寝る」


パキラ「…ごめんなさい、コホッ」


カルマ「明日は早くなる。俺の分の飯は作らなくていい」


パキラ「またデラシネ狩り?」


カルマ「さぁな」


パキラ「そう。分かったわ。おやすみなさい」


カルマ「おやすみ」




カルマナレ「デラシネは、言葉にしなくても互いの考えていることが、他人の思っていることが分かる不思議な生物だ。だから、物騒なことを考えていると彼らは逃げていく。しかし彼らを狩るのは難しくない。真摯に頼み込めばいいんだ。生活に困っているから死んでくれないか、と。何故か彼らはそれで身を捧げてくれる。そして俺は、彼らの善意を糧に今日も多少の金を得る。これが俺の、いや。人間の業だ。自分を生きるために他者を犠牲にする生きものの罪だ。人間の生活は彼らと比べて余りにも恥ずかしい」


カルマ「もっとも、大半の人間はデラシネが考えを読めるなんておとぎ話程度にしか信じていない。あんたもそうだろう?こんなとこまで何しに来たんだ」


アンスリウム「いやいや、今日も精の出ることですね。…カルマさん。昨夜、パキラさんにお贈りした手紙は、ちゃんと彼女に渡してくれましたか?」


カルマ「さてな。どっちにしろ読まずに捨てたとは考えないのか」


アンスリウム「そんなまさか。彼女がそんな事するわけありませんよ。ずっと昔から知っている仲ですし」


カルマ「……」


アンスリウム「カルマさん。あなたが私のことをよく思っていないことは存じています。ですが、悪い話ではないと思いますよ。私にとっても彼女にとっても、あなたにとっても、ね」


カルマ「どういう意味だ?まさかあんたが裕福だからとか言うつもりじゃないだろうな」


アンスリウム「裕福だからですよ。彼女にもっといい暮らしをさせてあげたいとは思わないんですか?あなたも、今よりいい暮らしがしたいでしょう」


カルマ「…それは」


アンスリウム「……おや、デラシネ。初めて見ましたよ。生きているのは」


カルマ「…」


アンスリウム「カルマさんの言う通り、臆病な生物では無いのかもしれませんね」


カルマ「チッ…」


アンスリウム「ふぅむ。見れば見るほど興味深い。身体は一体何でできていて、どうやって動いているのやら。それに、考えを読み取るというのは…」


カルマ「おい。引っ込んでろ」


アンスリウム「…まさか。更に驚きましたよ。彼らは、あなたの命令を聞くのですか?」


カルマ「……」


アンスリウム「あなたは奴らに命令を下し、意思を操ることが出来るんですね!素晴らしい!いつもあなたが大量に仕留めてくるデラシネの正体の謎が解けました!カルマさん、カルマさんが仲間を連れてくるよう命じれば更に…」


カルマ「俺はあんたのそういう、他人を犠牲にすることを何とも思ってない所が気に食わない。あんたには良心も良心の呵責もない。酷薄な野郎だ。デラシネの意思を操るなんて出来もしないし考えたこともない。そもそもあいつらに意思はない。俺の願いをあいつらが気まぐれで聞き入れるに過ぎん」


アンスリウム「ですが、お願いを伝えることは出来るんでしょう?ならば」


カルマ「黙れ。俺もパキラも、あんたの言う通りにはならん。話は終わりだ」


アンスリウム「……手紙、捨てたんでしょう?」


カルマ「……何の話だ」


アンスリウム「私が昨夜、パキラさんに渡して下さいとお願いした手紙。捨てましたよね?」


カルマ「さぁな」


アンスリウム「そうですか。まぁ、いいでしょう。また近いうちにこちらから出向きます。あぁそれから、デラシネの買い取りは、いつも通り大歓迎ですよ」


カルマ「…どうも」



カルマの自宅


カルマ「ちっ……」


パキラ「お帰りなさ…ゴホッ…ゴホッ」


カルマ「パキラ?どうした。顔色が悪い。具合が悪いのか?医者を…」


パキラ「違うの…ケホッ。大丈夫。ただ……」


カルマ「…どうした?」


パキラ「ううん。なんでもないわ。それより、早かったのね」


カルマ「あぁ…すまん。今日の収穫はゼロだ」


パキラ「いいのよ。やっぱり、デラシネ狩りなんてしない方がよっぽどいいわ。いつもより穏やかな顔してるもの」


カルマ「……いつもはそんなに険しいか」


パキラ「ええ。とっても。ご飯も美味しそうに食べてくれないし」


カルマ「そうか」


パキラ「デラシネは賢くて優しい生きものだわ。きっとあなたの悩みや、葛藤に気付いているから、あなたの前に姿を現すのよ」


カルマ「そうかもな」


パキラ「デラシネに分かるんだもの。私にもちゃんと分かるのよ」


カルマ「…そうだな」


パキラ「ねぇ、カルマ。私は、こうしてあなたが何の憂いもなく暮らしていてくれることが何よりの望みだわ。だから、もうデラシネを狩って暮らすのはやめましょう」


カルマ「帰ってきていきなりこんな話か。金はどうするんだ。俺には、他に出来るような仕事なんて」


パキラ「仕事が見つからなくてもいいわ。いざとなれば私がなんとかします」


カルマ「なんとか?どうやって」


パキラ「あなたは何も心配しなくて大丈夫。今まで、こんなに私のために頑張ってくれたんですもの。今度は私の番」


カルマ「パキラ…まさか」


パキラ「私、再婚します。あの人と」


カルマ「やめろ、俺のためにそんなことするな!俺はパキラが」


パキラ「もう決めたことよ。あなたがなんと言おうと、私はあなたの幸せのために生きていたい。重荷になるのは嫌」


カルマ「俺は、パキラを重荷だなんて思ったことはない!それに兄さんが」


パキラ「あの人の話はやめて」


カルマ「……すまん」


パキラ「私は今でもあの人を愛しています。あの人の弟であるあなたのことも。だからこそ、私は」


カルマ「……」


パキラ「ごめんなさい。さぁ、夕飯にしましょう。今日は豆とほうれん草のシチューよ」


カルマ「……あぁ」




カルマ「……」


パキラ「……カルマ」


カルマ「……」


パキラ「もう寝たかしら?」


カルマ「……」


パキラ「……ごめんなさい。あなたが私のことをしっかり考えてくれていることも、思いやってくれているのも、ちゃんと分かってるわ。でも、それは私も同じ。だから、許してね」



ドアの音


カルマ「……パキラ?」



月夜の森を歩くカルマ


カルマ「一体何をしにこんなところまで。…?あれは、アンスリウム!?」


アンスリウム「来てくれたんですね。パキラ」


パキラ「…ええ」


カルマ「おい!何のつもりだ!」


パキラ「カルマ?!」


アンスリウム「何のつもりもなにも。ただ人目を忍んで会いたかっただけですよ。2人きりで」


カルマ「おい、パキラ!帰るぞ!」


アンスリウム「そうは行きません」



パキラの首にナイフをあてがうアンスリウム


カルマ「っ!おまえ」


パキラ「…アンスリウム、お願い離して。こんな事をしなくてもあなたの話はちゃんと聞くわ」


アンスリウム「そうでしょうとも。ですがあなたの義弟さんがそうはさせてくれないと思ったので」


アンスリウム「…お願い、カルマ。何もしないで」


カルマ「……っ!」


アンスリウム「パキラ。あなたを信じますからね」



ナイフを収めるアンスリウム


アンスリウム「パキラさん。聞いてくれますか?」


パキラ「何を…?」


アンスリウム「パキラさん…!あなたが好きだ。ずっとこうして、あなたに会って、あなただけに直接告げたかった。脅迫紛いの手紙を差し上げたことや乱暴な真似をしたことは謝ります!ですが私は本気なんです。どんな手を使ってでも想いを遂げたかった!…最初は、あなたが幸せでいてくれればそれだけでいいと、どんな形でもいいと思った、でも!やはり私のそばに居てくれなければ嫌だ!パキラ!私を見て下さい!私だけを!不満があれば直します!あなたを幸せにできるならどんなことだって!私だけを見てください!私はあなたを…」



カルマがアンスリウムに殴り掛かる


カルマ「うおぉっ!!」


パキラ「カルマ!!」


アンスリウム「…くっ!!」



揉み合うカルマとアンスリウム


アンスリウム「離せ…っ!!このっ!お前はどこまで恥知らずなんだ!!」


カルマ「どっちがだ!!お前のような奴に、俺の家族は渡さない!!」


パキラ「やめてっ…!2人とも…ゴホッ…!やめ……ゴホッ!ゴホッ!ゴホゲホゴホッ…!」


カルマ、アンスリウム「「パキラ!!」」


カルマ「大丈夫か?!」


アンスリウム「今すぐ医者を呼びます!パキラ!しっかりして下さい!」


カルマ「お前は黙ってろ!!」


アンスリウム「お前は…!!!」



突然、たくさんのデラシネが森から出てきて3人を囲み、キラキラと光り始める。

驚くカルマとアンスリウム。パキラは咳き込んだまま


カルマ「…な……」


アンスリウム「なんですか……?これは…いったい」


パキラ「コホッ…コホッ…!やめて、…ふたりとも…コホッコホッ」


カルマ「…なん、だ?これは、なんなんだ。誰かの…気持ち?」


アンスリウム「怒りと…悲しみ……。まさか、これはカルマとパキラの……?」


パキラ「…伝わってくる。ゴホッ…。2人の思っていること…コホッ」


カルマ「……アンスリウム、あんたは」


アンスリウム「あぁ…、ああ…!やめて下さい…!やめろ!!聞きたくない!知りたくない…っ!!こんなの!!」


パキラ「…アンスリウム…コホッ…」


アンスリウム「嘘だっ…!嘘だ嘘だ嘘だこんなの!おとぎ話の延長だ!!信じない!私は信じない…!こんなの!!気持ちを感じられるなんて、想いを感じ取れるなんて、そんなことがあるもんか!!……パキラ…っ!」


パキラ「…っ!!」


カルマ「大馬鹿野郎!!」


アンスリウム「ぐっ…!!!」


パキラ「カルマっ!!やめなさい!!」


カルマ「……」


アンスリウム「デラシネに意思なんて無いと言ったのはお前だ!!やつらは何のために出てきたんだ!!何のために私にこんな仕打ちを!!デラシネなんかにっ!!」


パキラ「アンスリウム!……ゴホッ、ゴホッ。……あなたの想いも伝わってきているわ。あなたが、本気で私に恋をしてくれているって、…それも嘘なの?」


アンスリウム「ぐっ…うぅうーーー…!!!嘘なもんか!!嘘なもんかぁ…っ!!私は、私は、あなたが好きだ…っ。どうしようもないくらい……!」


パキラ「アンスリウム……」


アンスリウム「本当は気付いていたんだ……。デラシネなんていなくても、心なんて分からなくても、あなたがあいつをどれだけ愛しているかなんて……、分かっていたんだ!………なんで、なんでですか……あなたは、なんでまだ、こんなにもあいつの事を愛しているのですか?まだ、…なんで?なんで、私じゃいけないんですか?私は、いつまで経ってもあいつには勝てないんですか?あなたの夫には、私は…!私は!」


カルマ「…アンスリウム」


アンスリウム「何をやっても勝てなかった!いつも、あいつはみんなに持て囃されて、人気者で、優しくて、大きくて、……なのに嫌いになれなくて!!私より賢くて、私より強くて、私より…、ずっと……。私の、私の憧れだ。今も……」


パキラ「……」


アンスリウム「なぜか…なんて……分かっているんです…!理由なんてないのも分かっているんです…!私は……なんで……!あなたを好きになる権利すらない……!」


パキラ「…ねぇ、」


アンスリウム「やめて下さい。今はあなたが何を思っているか、全部分かっているんです。私を、憐れまないでください。2人ともです」


カルマ「……」


アンスリウム「……もう、やめます。今日のようなことは。…いえ、今までのようなことも。……もう、行きます。追わないで下さいよ。一人にしてください」


カルマ「…嫌な気分だ。嘘がないのも分かっちまう」


アンスリウム「諦めませんからね…!パキラ、私はあなたを諦めませんよ」


カルマ「うるさい。さっさと消えろ。一人になりたいんだろ」


アンスリウム「ムカつきますね」


カルマ「伝わってるよ」


アンスリウム「……ふん」



去っていくアンスリウム


カルマ「…パキラ」


アンスリウム「……ごめんなさい。カルマ。私のせいで」


カルマ「いや、俺の方こそ、今まで余計なことをしていた。すまない」


アンスリウム「そうね。…でも、私のためを思ってしてくれる余計なことは、とっても嬉しいわ。伝わってる?」


カルマ「…ああ」


アンスリウム「…きっとこの子たちは、私たちを仲直りさせたくて出てきてくれたのね。やっぱり、とても賢くて、とても優しい」


カルマ「ああ」


アンスリウム「この子たちを食べたりしなくたって、想いを伝え合えるのね私たちは」


カルマ「そうだな。今まで俺は……」


アンスリウム「……もう、済んだことよ」


カルマ「いや、俺はちゃんと、自分の業と向き合って生きていくよ」


アンスリウム「…そう」


カルマ「……さあ、帰ろう」


アンスリウム「そうね。帰りましょう」


カルマ「デラシネの光、か。……ありがとう」



デラシネの光 -fin-


•5人用

•男性役4、女性役1

•10〜15分くらい

•コメディ



登場人物


・ゆうしゃ(男性)

世界を救うべく旅立つ(予定の)勇者。

快活で勇敢。活力に満ち溢れていて、旅の予感に胸を高鳴らせている。


・せんし(男性)

筋肉を愛し、筋肉に愛されたおっさん。

でかい。イカツイ。

筋肉が筋肉で筋肉。


・まほうつかい(男性)

年齢不詳のエルフの男。

クールで落ち着いている。

だが、フェチパワーを溜めないと魔法が使えない。


・そうりょ(女性)

紅一点。

しっかり物で、金のために生きている。

すーぱーうるとら守銭奴。

長髪でメガネのクール系美女。


・まおう(男性)

設定なし。自由に。


・ゆうしゃの母(女性)

一言だけの役。

____________________


ゆうしゃ「よーし!王様からヒノキの棒と5Gももらったし、酒場で仲間も揃えた!準備万端だ!行こうぜ!!みんな!!」


せんし、まほうつかい、そうりょ「「「ダメだ(です)」」」


ゆうしゃ「なんでぇ…!?いや、待って!空気読んで?!今まさに、冒険のはじまりーー!って感じだったのに!!」


せんし「ダメだ!そんな貧弱な筋肉で旅に出たら死ぬぞ!!」


ゆうしゃ「は?…」


まほうつかい「ダメだ。賛成しかねる。旅に出る動機が不純だ」


ゆうしゃ「いや、まあただ冒険がしてみたいからとか、そういう気持ちもあるけど…」


そうりょ「ダメです。準備が足りません。まず、旅の準備を整えましょう」


ゆうしゃ「おお、一番まともそう!えーっと、そうりょさんだっけ。何が足りないと思う?」


そうりょ「まず、王様から頂いた支度金が足りません。王様の弱みを握って宝物庫の中身を丸ごと頂いたうえで、戦力も足りていないので、王国軍の出動要請もしましょう」


ゆうしゃ「だめだ!まともじゃないやこの人!!つーか、待って待って!だめだめだめだめ!!王様脅しちゃダメだから!!」


そうりょ「では、大臣を脅して国庫を開放させましょう。それか、ゆうしゃ様に男の娘パブで働いて頂きます」


ゆうしゃ「ダメだって!!君、本当にそうりょ!?つーか男の娘パブってなに?!」


せんし「準備など必要ない!!筋肉さえあればすべて解決だ!!筋トレするぞ勇者!!」


ゆうしゃ「ええっ?!いや、まあ筋肉も必要だとは思うけど…!」


まほうつかい「いや、最も大切なのは志だ。はっきりしろゆうしゃ。お前は何のために旅に出る?」


ゆうしゃ「うぇっ…?魔王を倒して…世界を救うため…?」


まほうつかい「話にならん。ゆうしゃ。お前は、お前のフェチを救う旅に出るのだ」


ゆうしゃ「…は?」


まほうつかい「くびれを!!太ももを!!わきを!!うなじを救うために旅にでろ!!お前のフェチはなんだ!!さぁ言ってみろ!!さあ!!」


ゆうしゃ「話にならないのはお前の方だろ!!めちゃめちゃ動機不純じゃん!!なに?!わき!?うなじ!??はぁ!!?」


そうりょ「とにかく、ゆうしゃさまには軍資金を稼いで頂きます。男の娘パブに行きますよ」


せんし「いいや、王国の兵舎に行くぞ!!まずは素振り1万回だ!!」


まほうつかい「いいや、まずはゆうしゃに、ゆうしゃのフェチを熱く語ってもらう。さぁ。さあ!!」


ゆうしゃ「まともな奴が一人もいねえ!!誰か!!誰か助けて!!誰か!!」


まおう「呼んだかゆうしゃ!」


ゆうしゃ「…え?…だれ?」


まおう「我はまおうである!!」


ゆうしゃ「なーんだまおうか……。まおう!!?うわぁああ!!やばいやばい!!ヒノキの棒しかない!!!」


まおう「フハハハハハハハハハ!!覚悟しろゆうしゃ!!貴様をこの場で血祭りにあげ、その後は教会前で待ち伏せし、復活して来る度に教会送りというエンドレスループの絶望を貴様にプレゼントだ!!」


せんし「そうはさせんぞモンスターの王め!!この私の筋肉の前に滅びるがいい!!!サイドチェストオオオオオオオ!!!」


ポーズをとるせんし


ゆうしゃ「やめてくれ!!それは味方もダメージくらう!!精神に!!ちょっ…!!まほうつかい…まほうつかい!!」


まほうつかい「むっ…!フェチを語る気になったか」


ゆうしゃ「バカ!!魔法使ってくれよ!!攻撃してくれ!!」


まほうつかい「無理だ」


ゆうしゃ「はぁ?!」


まほうつかい「私は、フェチパワー。略してFPを溜めなければ魔法が使えん」 


ゆうしゃ「使えねえなもう!!つーかフェチパワーって何だよ!!いや、待った。何となく想像できるから言わなくていいや。それより、その、FPはどうやったら溜まるんだよ!!」


せんし「うおおおおおお!!!くらえ!!フロント・ダブルパイセップス」


まほうつかい「FPを溜めるには、フェチへの想いを爆発させる必要がある」


そうりょ「ゆうしゃさま!!まおうとゆうしゃさまのバトルをショーにして、鑑賞料金を取るのはいかがでしょう!!」


ゆうしゃ「今まじめな話してるからぁ!!」


そうりょ「客を集めてきます!!」


ゆうしゃ「あ、ああ〜……!!…で、んで?!FPを溜めるには?!なに?!」


まほうつかい「フェチへの想いを爆発させる必要があると言ったのだ。耳が疲れているのか?宿屋で休んできたらどうだ」


ゆうしゃ「俺だってそうしたいわ!!すべて夢だったことにしたいわ!!でも5Gしかねーんだよ!!フェチへの想いを爆発ってなに!?なにをどうすんの?!」


せんし「ヒップレエエエエエエイズ!!!!」


ゆうしゃ「黙れええ!!!」


まほうつかい「とりあえず、私の最もFPが溜まるフェチポイントはうなじと手ブラと骨盤だ。どれかを見せてもらえれば話が早いが」


ゆうしゃ「はぁ?!まぁとりあえず見せれば良いのね?!ほら、うなじ!!うなじ!!」


まほうつかい「……フッ」


ゆうしゃ「鼻で笑うなてめぇ!!!」


まおう「ゆうしゃよ。こぬのか?」


ゆうしゃ「うっ…!」


せんし「ここは通さん!!アブドミナル・アンド・サイ!!」


まほうつかい「まぁ、今の所FPはゼロと言うことだ。残念だったな」


ゆうしゃ「んだよちきしょぉおお!!」


そうりょ「ゆうしゃさま!!一人も客が集まりません!!それどころかまおうとゆうしゃ様の戦いだと言った瞬間、みんな逃げていきます!!」


ゆうしゃ「そりゃそうだろうよ!!俺だって逃げたいわ!!」


まおう「こないならこちらからゆくぞ!!」


ゆうしゃ「うわわわわわわ!!はっ…!!そうだ…!!そうりょ!!髪をかきあげてくれ!!頼む!!」


そうりょ「1500Gですが」


ゆうしゃ「いいから頼むから!!」


そうりょ「はい」


うなじを露出するそうりょ 


まほうつかい「最高だ!!!FPが高まる!!溢れる!!!!いくぞ!!!うなじファイヤアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」


まおう「うわああ!!なんか心が汚れていくううううう!!!!」


ゆうしゃ「よっしゃ!!!どうだ!!!」


まおう「くっ……。覚えているがいい…ゆうしゃ…そしてその愉快な仲間たちよ…!!この借りはいずれ返してやるから魔王城までくるんだな!!フハハハハハハハハ!!」


高笑いと共に去っていくまおう


せんし「フッ……我がモストマスキュラーの前では敵ではなかったな……」


ゆうしゃ「よかったあぁ………死ぬかと思った……。そしてはじまりの王国から出られないかとおもった………」


まほうつかい「FPが尽きた。お前のフェチを語るのだゆうしゃ。フェチを語り合おう。それで多少は回復する」


ゆうしゃ「いや…えっと……」


せんし「見ろゆうしゃ!!これがまおうを追い払ったモストマスキュラーだ!!」


ゆうしゃ「ちょっ……!!うわっ!!」


そうりょ「髪をかきあげた代金払って下さい。ゆうしゃ様」


ゆうしゃ「いや…あれは!!」


まおう「ゆうしゃ。金が足りなくて王国の門を通れん。あと、魔王城まで馬車で帰りたいから2000G貸してくれ。」


ゆうしゃ「ええ?!!いや…!!」


せんし「バックラットスプレッド!!サイドトライセップス!!フロントラットスプレッドオオ!!」


ゆうしゃ「やめ…!!」


まほうつかい「何だ!耳か!!指か!!ふくらはぎか!!それともおへそか!!」


ゆうしゃ「もうやめてくれ!!」


そうりょ「早く払って下さい!!男の娘パブに売りとばしますよ!!」


ゆうしゃ「いやだぁああああ!!」


まおう「いいこと思いついた!!ゆうしゃと一緒に魔王城まで帰ればいいんだ!!」


ゆうしゃ「うわああああああああああああああああ!!!!」


暗転


ゆうしゃの母「ゆうしゃー。おきなさーい。朝よー」


目が覚めるゆうしゃ


ゆうしゃ「…ハッ!!!!……………夢か……。よかったあぁ………」


ゆうしゃ以外同時に喋る


せんし「バックダブルパイセップス!!」


まほうつかい「座ったときの膝か!!!」


そうりょ「有り金全部出してください!!」


まおう「さぁ!!いくぞ!!ゆうしゃ!!」


ゆうしゃ「ぎゃああああああああああああ!!!」


・声劇用台本

・約10分

・登場人物3人

・1人でやれないこともない




本文



登場人物

・閻魔様

・鬼

・語り部

________________________

語り部「こんな話がございます。なんでも人が亡くなって、閻魔様の御前に引っ立てられる段になりますと、閻魔様が、亡くなった人を極楽に行かせるか地獄へ落とすかお決めになる前に、その人の名前がなんと申すのか鬼に確認するんだそうでございます。そこで、例えば、その人が『トマト』だとか、『ナス』だとかいう名前だったりしたらば、『お前は野菜をワシの前に連れてきたのか!現世に返してこい!』なんていう風に、お言いつけになって、トマトさん、ナスさんは、そのまま生き返ってしまうんだそうな。今から皆さまにお付き合い頂くお話も、そんなお話でございます」


閻魔様「最近、めっきりワシのところに来る人間が少なくなったな」


鬼「はぁ。おかしゅうございますね」


閻魔様「おい、お前!まさかサボってるんではなかろうな!」


鬼「まま、まさか!滅相もない!地獄の鬼も青ざめるほどキリキリ働いております!はい」


閻魔様「うむむむ。おかしいな。こうも、人間が長生きするはずはないんだが……。おい!誰ぞ亡くなった人間がいないか、見て参れ!」


鬼「ははーっ!ただいま!」


閻魔様「……まったく。最近の鬼共はゆとりがすぎる。やれ、有給を寄越せだの、残業代を支払えだの、こないだは奪衣婆が定年退職させてくれと言ってきおったからな」


鬼「閻魔大王様!連れて参りました」


閻魔様「おぉ!よくやったぞ、鬼よ。お前は今度、評定を上げておいてやろう」


鬼「ははーっ!ありがたき幸せ!」


閻魔様「して、今連れてきた者の名はなんと申すのだ」


鬼「はは。田中ぴ【ピー】ちゅうと申すようです」


閻魔様「なに?」


鬼「ですから、田中ぴか【ピー】うと申すようです」


閻魔様「うぅむ、規制音のせいで聞き取りづらいな。これ、ちこう寄って耳打ちせい」


鬼「はは。それでは失礼をば。〜ゴニョゴニョ」


閻魔様「ふむふむ。む?……馬鹿者が!お前は何をやっておるか!」


鬼「なっ、なな、何がでございましょう!」


閻魔様「お前が連れてきたのは、国民的人気を誇る、某ボールから姿を現す黄色いネズミであろうが!連れてきてしまったら何とは言わんがアニメが1本終わってしまうであろう!」


鬼「し、しかし見たところ冴えないおっさ……」


閻魔様「いいから戻して参れ!ト【ピー】ワの森にだぞ!」


鬼「は、ははーっ!」


閻魔様「全く……、何を考えておるのやら。……んん?そういえば、何日か前にもヤツめ、黄色ネズミを連れて来おったな。……評定はやはり下げておくか」


鬼「閻魔大王様!連れて参りました!」


閻魔様「おぉ。今度こそちゃんと人間であろうな!」


鬼「ははっ!間違いなく!ちゃんと中年のおっさんでございます」


閻魔様「おぉ、でかしたでかした。して、そやつの名前はなんと申す」


鬼「はっ。鈴木幻の銀次と言うようです」


閻魔様「……は?」


鬼「えっ?いえ、鈴木幻の銀次と……」


閻魔様「な、え?鈴木?」


鬼「幻の銀次でございます」


閻魔様「いや、お前。『の』は助詞だろう?正確には準体助詞だ。名前に『の』が含まれるわけ無いであろうが」


鬼「いや、本当に戸籍にも幻の銀次で登録されていまして……」


閻魔様「デタラメを抜かすな!大方、手頃な人間がつかまらなくて、お前が飼ってるペットか何か連れてきたんであろうが!なんだ幻の銀次って!銀次はギリ分かるが幻のって何だ!」


鬼「私が聞きたいくらいでございます!」


閻魔様「とにかく戻してこい!そのついでに人間を探して参れ!言っておくがちゃんと人間を連れてくるまでワシの前に戻ってくることは許さんからな!」


鬼「そ、そんな殺生な!」


閻魔様「とっとと行って参れぁ!」


鬼「ひ、ひどい!人権無視だ!」


閻魔様「鬼に人権など保証されておらぬわ!……行ったか。まったく、ワシに嘘が通じんことぐらい分かるだろうに。舌引っこ抜いて地獄に落としてやろうか。んっとに。ダメだな。覇牢輪悪(はろうわあく)にまた求人出すか……」


鬼「連れて参りました!連れて参りましたよ、今度こそ!」


閻魔様「随分早かったが大丈夫であろうな!」


鬼「今度こそはバッチリでございます!」


閻魔様「では、その者の名を聞かせるがよい!」


鬼「ははっ!佐藤かずお(87)でございます!」


閻魔様「今どきそんな普通の名前をした者がおるか!もう良いわ!お前はクビだ!」


鬼「そ、そんなぁ〜!閻魔様の、鬼ーーっ!!」


語り部「とまあ、あの世でも苦労は絶えないようで、この世にいる間は少しでも、楽をして生きていきたいものでございますね。え?私の名前でございますか?私は高橋獅子王(らいおんきんぐ)と申します。えー、おあとがよろしいようで」

・登場人物4人

・約20分〜30分

・性別改変、口調の軽い改変可

・アレンジ、アドリブは、内容が変わりすぎない程度に



本文



登場人物



・ひさげ(男性)

妖怪のために提灯をつくる店、燈(あかし)を営んでいる店主。ミステリアスだが、物腰柔らかで穏やかな人物。


・いるま(女性 )

人間の20代の女性。

真っ直ぐで思いやりがあるが、真っ直ぐすぎて余計な言動が目立ったりするのが玉に瑕。


・えにし(男性)

燈(あかし)に提灯の材料を卸しているカワウソの妖怪。ぬぼーっとした性格。


・せつ(女性)

オマヨイ様になってしまった雪女。

斜に構えていて冷めた性格だが、悪い人では無い。


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ひさげ「どうぞ」


SE お茶を置く音


いるま「あ、ありがとうございます」


SE お茶を飲む音


ひさげ「落ち着かれましたか?」


いるま「はい。……ごめんなさい。急に入って来てしまって。その、……ご飯屋さんだと思ったんです」


ひさげ「いいんですよ。ゆっくりなさって下さい……道に迷われたんですか?」


いるま「……はい。ちょっと、色々あって途方に暮れてたら……この辺りには来たことないですし」


ひさげ「そうですか。……失礼かもしれませんが、格好を見るに就活か何かでこちらに?」


いるま「はい。……でも、履歴書すら受け取って貰えなくて……。なんかもう」



SE お茶を飲む音



ひさげ「そうですか。大変でしたね」


いるま「本当にすみません。こんな時間に。お仕事もありますよね」


ひさげ「いえ、丁度お客様もいらっしゃってませんし、大丈夫ですよ」


いるま「そういえば、何のお店なんですか?表の看板には、燈(とう)?って、書いてありましたけど」


ひさげ「あぁ、あれは燈(あかし)と読むんです。……そうですね、簡単に言えば、提灯を作るお店です」


いるま「へぇー」



SE お茶を飲む音



ひさげ「それはそうと、申し遅れました。私、店主の提(ひさげ)と申します」


いるま「あっ、こちらこそ。入間(いるま)って言いま……」



SE 腹の虫



ひさげ「おや」


いるま「あ……、いやぁ、お恥ずかしい……朝から何も食べてなくて……」


ひさげ「こちらこそ、気が利かずに。大したものはありませんが、夕飯の残りでよければ」


いるま「いえ、そんな!お茶まで頂いてますから!それに、直ぐにおいとま……」



SE 腹の虫



いるま「あぅ……」


ひさげ「ふふ……。このあたりはタクシーもつかまりませんし、この時間では電車ももうありません。お嫌でなければ、客間がありますので、泊まっていかれてはいかがですか?」


いるま「うぅ……、でも、そこまで甘える訳には……」


ひさげ「そうですね。……では、今晩、仕事を手伝って頂く、というのでどうでしょう。無理強いはしませんが……」


いるま「う〜〜ん……。じゃあ、ひさげさんがそれで良ければ……いいですか?」


ひさげ「ええ。もちろん。では、何か食べられる物を温めて来ますので、くつろいでいて下さい」


いるま「すみません、ありがとうございます」



SE 畳の上を歩く足音

SE 時計の音



いるま(よく考えたら、私が手伝える仕事なのかな……。提灯とか作るどころか触ったことすらないし……)



SE 時計の音フェードアウト


暗転 画面テキスト【10分後】


SE 時計の音フェードイン



いるま(お茶も飲み終わっちゃった……。何やってんだろ私……、就活は失敗するし、ここの店主さんには迷惑かけるし……。消えてなくなりたい……)


ひさげ「お待ちどおさまです」


いるま「あ、っあの!」


ひさげ「はい?」


いるま「やっぱり……タコス?!」


ひさげ「ええ。お嫌いですか?」


いるま「いや、嫌いな訳じゃ……まさかタコスが出てくるとは思わなかっただけで……」


ひさげ「あぁ、確かに似つかわしくないですよね。よければコーラもどうぞ」



SE プシュッ、トクトクトク



いるま(タコスにコーラ……。てっきりカレイの煮付けとか筑前煮とか、そういうのが出てくると思ってた……)


ひさげ「……もしかして、和食の方が良かったですか?うーん、さっき見た感じほうとうぐらいしか無かったんですけど」


いるま(ほうとう?!また、イメージしづらいものを……)


ひさげ「ほうとうで良ければ……」


いるま「あ、いえいえ!ちょっとびっくりしただけで、タコスが嫌な訳じゃないんです!……い、いただきます!」



いるま、しばらく食べる



いるま「……おいしい。ここのとこ、ずっとコンビニ弁当とかで……」


ひさげ「そうですか。よかったですね」


いるま「はい……。あ、そういえば、今日働かせて頂くっていう話なんですが」


ひさげ「あぁ。今、お話して大丈夫ですか?」


いるま「あ、食べながらっていうのも行儀悪いですね」


ひさげ「いえいえ、私は一向に構いませんよ。では、食べながらでいいので、説明しますね」


いるま「お願いします」


ひさげ「とは言っても、提灯づくりを手伝って頂く訳ではなくて、接客をお任せしようと思ってるんです」


いるま「あぁ、そっか。そうですよね」


ひさげ「えぇ。このお店では、お客様がお見えになってから作り始めるのですが、なにぶん、時間が掛かるもので。いるまさんには、お客様の提灯が出来上がるまでの間、話し相手になって頂きたいんです」


いるま「はぁ、なるほど」


ひさげ「ただ……。当店の客層は……、変わっているので。最初驚かれるかな、とは思うんですが」


いるま「大丈夫です。一宿一飯のご恩ですから!頑張ります」


ひさげ「そうですか。……ふふ。期待しておりますね」



OP

タイトルイン



いるま「すいません、何から何まで。制服までお借りしちゃって……」


ひさげ「いえいえ。よくお似合いですよ。お客様がおいでになるまでは自由になさっていてください」


いるま「はい。……それにしても凄いですね。この提灯たち」


ひさげ「あぁ……。それは、残念ながら売れ残ってしまった物で。……もう二度と売れない提灯なんですよ」


いるま「はぁ……。何で、なんですか?」


ひさげ「……それを必要とするオマヨイ様はもう、いらっしゃいませんから」


いるま「オマヨイ様?」


ひさげ「このお店の提灯は、全て、オマヨイ様ひとりひとりに合わせた物をお作りしています。でないと、辿り着けませんからね」


いるま「……?……はあ」


ひさげ「……いるまさん。このお店は」



SE 戸を開ける音



えにし「ごめんなせえ」


いるま「あ、いらっしゃ……、え?!」


ひさげ「あぁ、ご苦労さまです」


いるま「な……え……?」


えにし「お?旦那、人を雇ったんですかい?珍しい」


いるま「あ、えっと」


えにし「ん?あぁ、あっしは客じゃねえんです。ここに提灯の材料を卸に来てるだけで。お構いなく」


いるま「は、はい」


えにし「ほいじゃ、上がらせてもらいまさぁ」


ひさげ「いつもの所にお願いします」


えにし「あいよー」



SE 足音



いるま「えっ、と……」


ひさげ「すみません。このことは事前に説明しておくべきだとは思ったのですが、直に見るまでは信じて頂けないかと思ったので。……見ての通り、このお店に来られるお客様は、皆さま、いわゆる人間ではありません。いるまさんたち人間が、もっぱら妖(あやかし)だとか、妖怪と呼ぶ方々なのです」


いるま「な、なるほど」


ひさげ「騙すような形になってしまい、申し訳ありません」


いるま「いえいえ、そんな!確かに、ちょっとビックリはしましたけど、でも客層が変わってるっておっしゃってましたし。こういうことだったんですね。……あのー、ところでさっきのオマヨイ様っていうのは」


ひさげ「……お聞きに、なりますか?」


いるま「い、一宿一飯の恩を返すためにも、ちゃんと接客したいですから」


ひさげ「……そうですか。では」



場面転換

語り(絵巻みたいな感じがいい)

BGMイン



ひさげ「妖は寿命が尽きると、人間でいうあの世、『カクリヨ』という場所に行く必要があります」


いるま「えっ!妖怪って死ぬんですか?!」


ひさげ「えぇ……。自分の事を覚えていてくれる、知っていてくれる人間や動物、妖が1人も居なくなってしまうと、妖は死んでしまいます」


いるま「そうなんですね」


ひさげ「そう。そして、カクリヨに向かうには、自身の『忌み名』、本当の名前を知っている必要があるのですが、大抵の妖は忌み名を忘れてしまっているか、そもそも知らなかったりするので、死後、探し回る羽目になります。この、自身の忌み名を探し回る妖のことを、オマヨイ様、と呼ぶのです」


いるま「なるほど。……本当の名前っていうのは、河童とか、天狗とか、そういうのじゃなくてってことですか?」


ひさげ「そうですね。河童や天狗というのは、種族を表す呼び名ですから。いるまさんも、“人間”の“いるま”さんでしょう?つまり、河童の誰それ、だとか、天狗のなにがし、という風に個人個人が名前を持っているんですよ。ただ、忌み名というのは、それともまた違います」


いるま「そうなんですか?」


ひさげ「忌み名、というのは、他人に絶対に教えてはいけない、その人そのものを表す大事な名前です。人に知られれば、最悪命の危険もあります。だから、ふとした拍子にポロッと言ってしまわないように、そもそも、自分も自分の忌み名を知らない、というケースが殆ど。ですから、皆さん死後に探すことになるのです。いるまさんにも、忌み名があるはずですよ?」


いるま「えっ、じゃあ。私も死んだあとオマヨイ様に?」


ひさげ「いえいえ。人間は、親御さんやご先祖さまが忌み名を知っていて、教えてくれることが殆どですから。人間のオマヨイ様は滅多に見かけません。ただ、妖は、一人でぽっと生まれますので」


いるま「そうなんですね……」


ひさげ「そうです。……話を戻しますが、カクリヨに行くための忌み名を探すためには、その妖に合った提灯が必要なんです」


いるま「あ、それじゃ、ここでその提灯を作ってるってことなんですね」


ひさげ「そう。ただの提灯じゃないんですよ」



場面転換

店内



いるま「へぇー……、とっても大切な……。あれ?でもそれじゃあ、売れ残ってしまった提灯って……」


ひさげ「……。自分の死を認めたくない、やり残したことがある、そんな妖は、提灯を受け取ることを拒否して、こちらの世界に留まってしまうんです」


いるま「そっか……。そうですよね。悲しいですけど、仕方ないことですよね。……でも、それって、カクリヨに行けなかったらどうなっちゃうんですか?」


ひさげ「それは……」


えにし「アラタマになっちまうんだよ」


いるま「あらたま?」


えにし「人に悪さをする妖のこってぇ。アラタマになっちまったら、もうカクリヨにはいけねぇから、退治されるか、どっかで祀られるかだな」


いるま「祀られる?」


えにし「あぁー、最近の子はそういうの知らねぇよなあ。ほら、神社ってあるだろ?あれって、全部が全部いい神さんじゃねえんだよ。ホントに偉くて奉られてる神さんと、悪いことばっかすっから、大人しくしてもらうために祀られる神さんと2パターンいんだ。んで、悪いことばっかする方の神さんは、大体、アラタマになっちまった元妖だな」


ひさげ「そう。簡単に言えば、悪い神様が荒魂(あらたま)、良い神様が和魂(にぎたま)ですね。たまに、元妖のニギタマもいますよ」


いるま「はぇー……」


えにし「まぁ、ホントはもっと複雑な話なんだけどな。ところで旦那、終わりやしたぜ」


ひさげ「あぁ、ありがとうございます。お茶でも飲んでいかれますか?」


えにし「いやぁ、このあとも仕事が詰まってるんで。またの機会にしまさぁ。そいじゃ」


いるま「あ、えっと、ありがとうございます」


えにし「おう。気張ってけよ、人間のねーちゃん」



SE 戸の音



ひさげ「とまぁ、このお店の説明はそんなところです。働けそうですか?」


いるま「え、えぇ……。でも……」


ひさげ「……まぁ、嫌ですよね」


いるま「いえ!そんな!そういうことじゃなくて……。ただ、私にそんな大役が務まるのかなって。……私は、就活100社受けても1社も内定もらえないし、履歴書すら受け取ってもらえないし……。そんな大切な役目が務まる気がしないというか……」


ひさげ「就活なんて、ほぼ運ですよ。相手の気分次第ですから。……それに、オマヨイ様が忌み名を探すお手伝いをして欲しいという訳ではないんです。それは私の役目ですから。いるまさんにはただ、お話相手になって頂ければそれでいいんです」


いるま「そう、ですか……。あの、私でよければ……」


ひさげ「ありがとうございます。……渡りに船ですよ。何せ、ほら。求人を出すわけにもいきませんし、妖を雇うとなると大変ですから」


いるま「そ、そうですよね。あはは……」


ひさげ「本当に……、妖にはお金なんて必要のないものですからね」


いるま「あ、そうなんですか?」


ひさげ「えぇ、なので」



SE 戸の音



ひさげ「……」


いるま「ぁ、い、いらっしゃいませ」


せつ「……」


ひさげ「……いるまさん。私は、提灯を作り始めなければなりませんから、お任せしましたよ」


いるま「えっ!じゃあオマヨイ様……」


ひさげ「ごゆるりと……」



SE 足音



せつ「……」


いるま「あ、あの……」


せつ「……」


いるま「ええっ……と」


せつ「……なに?」


いるま「え?……いや、そう……。い、いい天気ですよねー……なんて……」


せつ「……」


いるま「あ、えっと、私、いるまって言います。今日からここで働かせて頂いてます。よろしくお願い、します」


せつ「……私は、せつ」


いるま「せつさん!いいお名前ですね!」


せつ「……」


いるま「あー……」


せつ「あなた、人間?」


いるま「あぁ、はい。人間です」


せつ「そう。……人間を見るのは本当に久しぶり」


いるま「そうなんですか?」


せつ「……えぇ」


いるま「あ、よ、良かったら、こっちに座って話しませんか。その……、良かったらですけど」


せつ「……」



SE 足音、座る音



いるま「……で、人間が久しぶり、なんですか?」


せつ「えぇ。……見てわかるでしょ。私、雪女だから」


いるま「あぁー、雪山、とかに住んでるんですかね?」


せつ「そうよ」


いるま「確かに、雪山にあんまり人間は行きませんもんね。私も、スキーで1回行ったぐらいしか」


せつ「そうね……。スキー場なんて、山の一部でしかないから」


いるま「……でも、なんか意外ですね」


せつ「……?なにが?」


いるま「雪女なんて、めちゃめちゃ有名なのに、忘れられるなんてことあるんですね」


せつ「あなたね……。ちょっとデリカシー無さすぎるんじゃない?」


いるま「あっ!すみません!ごめんなさい!本当に……、何でこんなこと言っちゃったのか……、つい……」


せつ「……いいのよ。変に気をつかってもらうよりよっぽどいい」


いるま「……すみません」


せつ「そうね。みんな、雪女自体は知ってても、私のこと、“雪女のせつ”のことは知らないでしょ?そういうことよ」


いるま「あぁ、個人を知る人がいないと……っていうことなんですね」


せつ「そう。……あなた、なーんにも知らないのね。人間らしいわ」


いるま「ごめんなさい……」


せつ「いいのよ。……あの人もそうだったし」


いるま「あの人?」


せつ「……まぁ、元カレよ。人間のね」


いるま「元カレ……」


せつ「私のこと、何にも知らないくせに、私が雪女だって分かった途端……」


いるま「えっ?!まさか別れちゃったんですか?!こんなに美人なのに?!!もったいな!!」


せつ「…………。デリカシーがないというか、大物というか……」


いるま「あっ、ごめんなさい。……でも酷すぎません?!別れて正解ですよそんな男!」


せつ「別れたんじゃなくて捨てられたんだけどね。正直、傷ついたわ。あの人のこと信頼して、打ち明けたのにね」


いるま「うーわ、マジでさいってー!」


せつ「……あのね、確かにそうかもしれないけど、一応好きだった相手だから、あんまりボロクソに言わないでもらえる?」


いるま「あっ!!……すみません」


せつ「ふっ……。……あなた、恋愛の経験ってある?」


いるま「あぁ〜、まあ、学生の時に2回ぐらい。2回とも片思いで、そういう関係にはなれずじまいでしたけど」


せつ「そう……。羨ましい。綺麗な思い出のままで終わらせるのが1番よね。恋愛なんて」


いるま「……お相手の人、どんな方だったんですか?」


せつ「……うーん、そうねぇ。人畜無害でお人好しだけど、気の弱い男だったわね」


いるま「あぁ〜……」


せつ「今からもう、300年は前かしら。彼、猟師だったんだけどね?吹雪で迷って、行き倒れてたのよ」


いるま「え?……じゃあ、そこを助けて……ってことですか?」


せつ「そうよ?大変だったわ。色々」


いるま「うわぁ〜、ロマンチックなお話!凄い馴れ初めじゃないですか」


せつ「まあ、ドラマチックではあったわね」


いるま「え?!それなのに、その人、せつさんのこと捨てたんですか?!」


せつ「そうね」


いるま「ひどい!こんな美人がしかも自分のこと助けてくれた相手なのに!!サイッテー!」


せつ「いや、だから。あんまり悪く言わないでって」


いるま「ご、ごめんなさい。つい。……でも、たかだか相手が妖怪だったってだけで捨てるまでいきます?ふつー」


せつ「当時はね。人間の価値観って違ったのよ。妖怪は邪悪。絶対に近づいちゃダメ。じゃなきゃ、自分の親兄弟まで酷い目にあわされる、ってね」


いるま「……でも、助けてくれた相手なのに」


せつ「……彼の気持ちも分かるのよ。確かに得体の知れない相手は怖いし、ましてや自分と違って人間じゃない相手だから。人間って、自分とは違う相手が怖いんでしょ?私たち妖も、大抵そうだし。人のこと言えないわ」


いるま「まあ、確かにそういう人もいます。いじめとかもするし……。でも、最近はそういうこともなくなってきてて、自分と違う相手も受け入れよう、みたいな」


せつ「ふーん」


いるま「だから!せつさんも今度はいい相手が見つかりますって!こんなに美人なんだし!」


せつ「……うふっ。ありがとう。私、死んでるけどね」


いるま「あっ……」


せつ「あはは。いいのよ。そんな顔しないで。嬉しいわ。素直に」


いるま「もう……、ほんっとうにごめんなさい。私、こういうところがホントにダメなところで……。空気読めないって言うか、余計なことばっか言うっていうか……。だから、就活も落ちるんですよね……」


せつ「……なんだかよく分からないけど、相手によっては、あなたのそういうところは美点にもなりうるのよ。そういうあけすけなところが好きだっていう人は必ずいるわ。特に妖なんて、みんなそういう相手の方が好きだったりするのよ?」


いるま「そうなんですか……?」


せつ「ええ。みんな、何百年も生きてて、気難しいのばっかりだからね。気を使われると逆にへそを曲げる、なんて奴の方が多いわ」


いるま「……えへへ。じゃあ、私、この仕事向いてるかもしれないですね」


せつ「それは……どうかしら……」


いるま「えっ、そ、そんな……、冗談、ですよね!?いやだなぁ!あははは!あははははは!」



溶暗

明滅フェード(時間経過演出)



せつ「でね?酷いのよ?そいつ結局、他の女の子娶ったんだから」


いるま「うわぁー」


せつ「正直おかちめんこだったわ。絶対私の方が美人」


いるま「なんとなく腹立ちますよねーそれ。私も、好きだった相手が別の女の子と付き合い始めた時……」



溶暗

明滅フェード(時間経過演出)



いるま「で、酷いんですよ?!出身大学言ったら鼻ほじりながら鼻で笑うんですよそいつ!ハゲのくせに!」


せつ「あぁー。いるわよね。身分とか肩書きだけで相手を見下すやつ」


いるま「そうなんですよ!ハーバード大とか出てからやれってんですよそういうことは!」



溶暗

明滅フェード(時間経過演出)



いるま「それで……」



SE 時計の定刻チャイム



いるま「あ、もうこんな時間。ごめんなさい。お茶も出さずにずーっと……」


せつ「いいのよ。楽しかったわ。それに、熱いの苦手だから」


いるま「あ、じゃあ、アイスティーとか……」


せつ「……ううん。ありがとう。嬉しいけど、もう行かなきゃ」


いるま「あ……」


ひさげ「お待たせ致しました」



スチル 提灯



いるま「……わぁ、きれい」


せつ「……ほんとに」



スチルから店内観へ



せつ「ありがとうございます。お礼は必ず」


ひさげ「いえ。良き旅路となりますよう」


せつ「じゃあね。ありがとう」


いるま「あ……」



SE 足音



いるま「あの!せつさん!」


せつ「……?なに?」


いるま「あの、あの……、こんなこと言っていいか分かんないんですけど、せつさんって最近亡くなられたんですよね?」


せつ「……そうよ」


いるま「じゃあ、じゃあ、きっと、せつさんを捨てたっていう猟師の人、孫の代まで語り継いでたんですよ!せつさんのこと!」


せつ「……!」


いるま「忘れられなかったんですよ、きっと!で、今回はたまたま、たまたま、孫の人が自分の子供に話すの忘れちゃっただけで……!」


せつ「……そうね。……そうだと、いいわね」


いるま「絶対そうです!」


せつ「……ありがとう。いるまちゃん」



SE 戸の音



いるま「……あ。……せつ、さん」


ひさげ「……」


いるま「あ、ひさげさん……。あの、ごめんなさい。……私、余計なこと」


ひさげ「いるまさん」


いるま「……はい」


ひさげ「私は、長い事このお店をやっていますが、今日ほど、お客様が満足そうに提灯を持ってお店を後にされた日はありません」


いるま「……え?」


ひさげ「いるまさん。ありがとうございます。……とっても、助かりました」


いるま「……!いえ!良かった……!……良かったです!」


ひさげ「さて、もうこんな時間ですね。いるまさんの寝床の用意をしなければ」


いるま「あっ!……ありがとうございます。えへへ」


ひさげ「いえ……。……時に、いるまさん」


いるま「はい?」


ひさげ「良ければ……、もし、いるまさんさえ良ければなんですが」


いるま「はい。なんですか?」


ひさげ「この、お店で。燈(あかし)で働いて見る気はありませんか?」


いるま「えっ?」


ひさげ「もちろん、お給金はお出ししますし、福利厚生もちゃんと出来るようにします。最初は、アルバイトのような形になってしまうんですが、ゆくゆくは正社員のような形で……。考えて、頂けませんか?」


いるま「……こっ」


ひさげ「こ?」


いるま「こっちからお願いしたいくらいです!ありがとうございます!ぜひぜひ、よろしくお願いします!」


ひさげ「え、ええ。よろしくお願いします」



いるま、ひさげ、雑談アドリブ


フェードアウト



いるまナレ「こうして、私の就活は終わりを向かえた。そして、ちょっと変わった職場での毎日が幕を開けるのだった。これから、どんな日々が待っているのか、不安でもあるし、楽しみでもある。でも、出来るだけ長く、いられたらいいなぁ」



エンディング


・一人称の変更、改変、加筆等OK



本文


お前、100万ドルを一日で稼いで一日で使い切ったことあるか?俺はあるぜ。


100万ドル稼いだ帰り道にタクシーで10ドル使って、残りをタクシーに置き忘れたんだ!

ハッハッハッハッハ!


あ?おい、バカ言うな。後悔なんかしてない!俺を乗せたタクシーだぞ?

99万ドルのチップを受け取って当たり前だ!

・口調の変更、改変、加筆等OK



本文


待てよ

あんまりちょこまかすんな

お前が逃げ回れば

その分だけ被害もデカくなるぞ

大人しく吹っ飛ばされろ


あぁいや、待った

お前、免許証とか持ってるか?

寄越せ

身元の確認が取れた方がいいだろ?

預かっといてやる

でなけりゃ歯の治療記録はとってあるか?

そうか……仕方ねえな


ポリシーには反するけど

首から下だけ吹っ飛ばしてやる

やっぱ免許証もださなくていいわ

あばよ

・口調の変更、改変、加筆等、OK



本文


ギャンブルは常に1/2だ

勝つか負けるかなんて

単純な話じゃない

勝つ目を出せるか

勝つ目を出せないか、だ


一流の勝負師は

どんな手を使っても

勝つ目を出す

運は実力の一部に過ぎない

ツキを味方につけて

コントロール出来るやつが

最後に笑うのさ


ここはチャチな運試しの場じゃない

ちまちまと賭けるのはやめな


オールインかフォールドかだ


火傷したくないんだったら

とっとと降りろ

・改変、加筆等OK



本文


人間は“同調”を選択してしまう生き物です

他の大多数の人間の行動や選択を真似て

自身の行動を決定する傾向があり

日本人はそれが特に顕著です

例えば

あなたがエレベーターに乗る際

もしも

先に乗っていた人が全員

扉に背を向けて乗っていたら

どうしますか?

恐らく

扉の方を向いて乗る方が

合理的なのにも関わらず

あなたも扉に背を向けて乗り込むでしょう

これを

ハーディング現象と呼びます

・一人称の変更、改変、加筆等OK



本文


人を進化させるのは争いだ

人類の歴史は

闘争と革命の歴史


暮らしに役立つものの殆どは

争いの中から生まれた

お掃除ロボットや

スマートフォン

ホッチキスだってそうさ


互いに殺し合うすべを磨き

殺されないための技術を発展させる

そうして生まれたものを

また闘争に持ち込む

その繰り返しで

高みへ至る


僕たち2人も

そうなろうよ

だから

殺し合おう

ね?



・90秒台本

・1人用



本文



憎みあっていないと

息も出来ないのだろうか


隣あっているのに

ひと目見ることも

叶わないのだろうか


この水晶のような

痛みが無ければ

生きていると

分からないだけ


その残響のような

愛しさがなければ

死んでいると

分からないだけ


風を泳いで

空を掻く


花を悼んで

雨を数える


灰の降る街に

傘を忘れて

嘘を願えば


春凪を待つ


いつになろうとも

どこかへ過ぎ去ろうとも


君を待たず

ここにひとり

・90秒台本

・1人用



本文



肺を満たす

陽射しの香り


背中を優しく焦がす

風を忘れた春の色


凪いだ景色の中に

冬ざれは無い


ほんのりと冷たい

あの手は

日陰に寄り添う

ささくれは

春には生きられない


この場所で

待っていれば

帰ってくるだろうか


ささやかな木陰に

また戻ってくるだろうか


白い息に曇る

窓ガラスを煩わしく思うのは

きっと

思い出してしまうから


石竹色の街が

私に語りかける

探さなくていいのかと


いいんだ

もう

会いたくないような気もするから

・90秒台本

・1人用


本文



ふぅ

少し疲れたな

漕ぐのを交代してくれるかい?


見てごらん

あの星は

魔法で滅びた


ん?

違う違う

みんなお互いに

恋の魔法を使ったんだよ


星の人口が奇数だったからね


最後の一人は可哀想に



あそこの星は

コールドスリープで

滅びた


不老不死を目指したけど

誰も彼も他人任せでね


いつか誰かが

何とかしてくれる

そう考えて

ひとり

またひとりと

冷凍睡眠を選び

ついには

起こす側がいなくなった


あぁ

あの星は

チキュウか


あそこは…

聞かない方がいい


さぁ

もう行こう

漕ぐのを代わるよ