春凪

・90秒台本

・1人用



本文



肺を満たす

陽射しの香り


背中を優しく焦がす

風を忘れた春の色


凪いだ景色の中に

冬ざれは無い


ほんのりと冷たい

あの手は

日陰に寄り添う

ささくれは

春には生きられない


この場所で

待っていれば

帰ってくるだろうか


ささやかな木陰に

また戻ってくるだろうか


白い息に曇る

窓ガラスを煩わしく思うのは

きっと

思い出してしまうから


石竹色の街が

私に語りかける

探さなくていいのかと


いいんだ

もう

会いたくないような気もするから

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