雨通り4

・朗読用

・約3〜5分



本文


雨が降り続く通りがあった。

今日はその中の、とある窓辺のお話。

窓を開け放し、冷たい空気にうたれながら、窓辺では女性が通りを眺めていたのだった。

すると、天井から吊るされた鳥籠から、彼女が飼うカナリアが話し掛ける。

「僕ももう、長くないのかもしれない」

「そう。そうなのね」

窓辺の女性は立ち上がると、カナリアの籠へと向かった。

そして、籠を胸の前に抱えると元いた窓辺に座り直した。

「ねえ。飛んでいきたい?」

「僕かい?嫌だよ。雨が降っているじゃないか」

「雨が降っていなかったら?」

「それでもかな。いつか雨が降るかもしれない。濡れるのは嫌だから、僕はずっとここにいるよ」

「そう」

女性は籠の留め具を外してカナリアを外に出すと、そっと、両手でカナリアを包み込む。

そして、カナリアを自身の目の高さへと持ち上げた。

「ずっと、いてくれる?」

「少なくともどこにも行かないよ」

「ずっと?」

「ずっと」

いつの間にか、雨は上がっていた。

猫猫権左衛門の台本

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