雨通り3

・朗読用

・約3〜5分



本文


雨が降り続く通りがあった。

今日はその中の、あるカフェのお話。

窓際に座る少女が抱えるカップの中、その黒い水面には、窓越しの雨が映っていた。

するとそこへ、少年が通りかかり、言った。

「苦いの好きじゃないなら、砂糖入れればいいのに」

少女は、とても苦々しい表情をしていたのだ。

窓の外を眺めながら、少女が言う。

「いいの。これで」

「でもちっとも飲んでない」

「いいの。飲みたくて注文したんじゃないから」

少女は、コーヒーカップには口をつけていなかった。

少年は、少女の対面の席に座った。

「でも冷めるよ」

「いいの。冷ましてるんだから」

少年は、何を頼むでもなく、少女に言った。

「まぁ、ここのコーヒーは冷めても美味いしね」

「そうね」

そうして、少女がコーヒーを飲み終えるまで、少年は、ただ少女の対面で色々な話を続けるのだった。

いつの間にか、雨は上がっていた。

猫猫権左衛門の台本

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