雨通り1

・朗読用

・約3〜5分



本文


雨が降り続く通りがあった。

今日はその中の、ある花屋のお話。

ドアベルの音をたてて、一人の青年が、花屋を訪れた。

薄明かりの店内から、店主が言う。

「いらっしゃいませ」

店主は、花切ばさみで、青い花束を作り上げているところだった。

青年は、狭い店内の花を見て回る。

しばらくして、

「何をお探しですか?」

店主が青年に声を掛けた。

青年は応える。

「大切な人に贈る花を」

「でしたら、これはどうです?」

店主が青年に勧めたのは、レンゲソウだった。

しかし青年は、首を横に振る。

「もっと、はっきりと感じられる花がいいんです」

「でしたら、これは」

次に店主が勧めたのは、ペチュニア。

しかし、青年の表情は冴えないままだ。

「雨を邪魔しない香りの花が欲しくて」

「では…」

店主は、店の外に出て、プランターから一輪、ネリネを摘んできた。

「こちらはどうです?」

青年は口を開いた。

「それを下さい」

そうして、一輪のネリネがラッピングで飾られる。

青年が店から出ると、雨は上がっていたのだった。

猫猫権左衛門の台本

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