おとぎ会議
・声劇用短編台本
・約10〜15分
・登場キャラクター数: 7
本文
登場人物
・アリ
・キリギリス
・赤ずきん
・ジャック
・子ブタ
・人魚姫
・ナレ
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ナレ「子供の頃、寝物語に聞かされたおとぎ話。そんな魅惑の世界の住人たちが、みんなで集まって、何やらお喋りを楽しんでいるようです。何を話しているんでしょうか。お茶会の予定?それとも、オオカミをやっつける方法?少し、覗いてみましょう」
アリ「死ね」
キリギリス「いきなり死ねはないだろ」
アリ「黙れ穀潰しめ。お前のように刹那的な享楽に耽って他の虫が必死こいて集めた食料を食い潰すしか能のない寄生虫は種ごと滅びてしまえ」
ナレ「おやおや、アリとキリギリスが口喧嘩を始めてしまったようですね。アリとキリギリスのお話は知っていますか?冬に備えてせっせと働くアリと、冬への備えを怠って遊び暮らしていたキリギリスのお話です」
ジャック「おいおい。ちょっと言い過ぎじゃないか?人にはそれぞれ生き方ってのがあるんだからさ」
赤ずきん「別に、アリはキリギリスの生き方を否定した訳じゃないだろ?自分たちが集めた食料を横から掻っ攫っていく根性が気に食わないだけだ。なぁ?」
子ブタ「ま、その点に関しちゃ、ボクにも一家言あるね。美味しいとこ取りは良くないと思う」
人魚姫「え〜。なんか話むずかしい〜。あとみんな顔怖い〜。ちょべりば〜」
ナレ「ジャックと豆の木のジャックに、あの赤ずきんに、三匹の子豚の子ブタに、人魚姫までいますね。これは素敵なパーティーです」
アリ「働き者こそ、評価されるべきなんだ。怠けてた奴らにスポットライトが当たるのは我慢がならない。マッチ売りの少女とかな。あいつはもっと、営業努力をすべきだ」
キリギリス「おいおい。仕方がないだろ。あいつはまだ子供だ」
赤ずきん「ふん。あたしも子供だけどね。人一倍働いてたよ?働き者の赤ずきん、って導入に書かれるのは伊達じゃないのさ」
子ブタ「そうだねぇ。ボクなんか、家建てちゃったからね」
人魚姫「え〜。子供に働かせるとかありえな〜い。つ〜か働きたくな〜い」
アリ「ともかく。キリギリス。貴様はおとぎ話の世界から抹消されるべきだ」
キリギリス「待てよ。それじゃ、アリとキリギリスじゃなくて、アリ、になるじゃないか」
アリ「それでいいんだよ。お前が何かしたか?面白おかしく遊び暮らしてただけだろ」
人魚姫「アリが働いてるだけの話とかつまんないし夢な〜い」
ジャック「そうだぜ。おとぎ話に不要な登場人物なんていないんだって。その理論でいったら、三匹の子豚なんて話崩壊しちゃうし、オオカミが、レンガの家建てる前にブタんとこ行っちゃって、喰われちゃうだろ?」
子ブタ「やめてくれよ…。そもそもあの頭の回らないブラザー達が見つかっちまったのがオオカミに目をつけられた原因だ。いい迷惑なんだよ」
赤ずきん「話が脱線してるぞ。今はキリギリスをどうするかだろうが。次にくだらない話を始めた奴は腹を掻っ捌いて石詰めて殺すからな」
子ブタ「こいつぁ傑作だ!ボクがそれやられたら本当の“ポークチョップ”だ!ハッハッハ!」
赤ずきん「……」
子ブタ「ちょっとしたジョークだって。そんな目で見るなよ」
赤ずきん「フン。とにかく、キリギリスはどうにかすべきだろう」
キリギリス「どうにかって?」
赤ずきん「ふさわしい処罰を与えるか何かすべきだ。おとぎ話の世界から永久追放でどうだ?」
人魚姫「え〜、厳しすぎ〜」
ジャック「ああ、流石にやり過ぎだろ。ヘンゼルとグレーテルが食べちゃったお菓子の家を作り直す、とかでいいんじゃないか?」
キリギリス「待ってくれ。ジャック、君はどっちの味方なんだ」
ジャック「え?いや、まぁ…。俺は別に遊んでた訳じゃないし…」
キリギリス「大体において、何で遊んで暮らすのが悪いんだよ。生き方は人それぞれだろ?お前らが働き者なのはお前らの勝手じゃないか」
アリ「だから、そこは勝手にしてもらって別にいいんだよ。処罰云々もどうでもいい。ただ、お前が、我々が汗水たらして集めた食料を食い潰しただけなのに、タイトルにまでなって私と同じ主要キャラ面してるのが気に食わない。是非とも、目立たず独りでひっそりとくたばってもらいたいんだ」
キリギリス「おいおい…。遊び暮らしてたにも関わらず、主人公で、タイトルにまでなってるやつも居るぞ?ほら!」
人魚姫「え?あーしー?ちょーうける〜」
子ブタ「あぁ、ボクも不思議に思ってたんだ。何でこんな軽いのが主人公なんだ?どこがとは言わないけどさ」
人魚姫「ええ〜、わかる〜?最近4キロ減ったんだよね〜。最近スムージーとかハマっててー。マジありがとー」
赤ずきん「悲劇のヒロインだからじゃないか?ま、最近じゃハッピーエンドになってる作品も多いし、とてもそうは見えないけどな」
人魚姫「えー?ヘロインー?ダメだよクスリはー」
ジャック「ま、まぁ、ほら、人によってスタンスは違うんだからさ。もうやめようぜ」
アリ「いいや、やめない。このバッタもどきがおとぎ話の世界の住人をやめて、日本童話の世界で再就職先に困り、路頭に迷う姿を見るまでは絶対にやめない」
キリギリス「わかった、なら、俺が悲劇のヒロインだったらいいんだな?」
赤ずきん「へえ?」
子ブタ「ま、ある意味悲劇だよねぇ」
人魚姫「え?あーしとおそろ?まじうけるー」
ジャック「やめとけって…」
アリ「…聞かせてもらおうじゃないか。何を以てして自分を悲劇のヒロインだと言い張るのか」
キリギリス「………………。キリギリスの寿命はな。大体2ヶ月くらいなんだよ」
全員「…………」
子ブタ「あぁ…そりゃあ…」
赤ずきん「遊ぶね」
ジャック「遊んじゃうな」
人魚姫「遊ぶよね」
アリ「……」
キリギリス「…ごめんな。なんか」
アリ「いや…こちらこそ。……あの…」
キリギリス「…ん?」
アリ「…ローストビーフとか、あるんだけど…。食べる?」
キリギリス「……いや…いいかな」
アリ「そっか」
キリギリス「うん」
人魚姫「あ、あーしんち、こないだPS4買ったけど…」
キリギリス「いや、クリアする前に多分死ぬから…」
人魚姫「あっ…」
キリギリス「ごめんな。あと、泳げないし」
人魚姫「いや…うん。なんか…ごめん」
ナレ「どうやら、楽しいお茶会もこれでお開きのようです。楽しい時間はずっとは続かないんですね。めでたしめでたし」
赤ずきん「あっ、ごめんな、石詰めて殺すとか言って…」
子ブタ「あ、ボクも…。ある意味悲劇とか…言ったかも。ごめん…」
キリギリス「あぁ、いや、気にしてないから…」
ジャック「お、俺んち行こうぜ!豆の木から豆めっちゃ採れたからさ…。ハハッ、ハハハハハハッ!」
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